『奇跡のシンフォニー』
 フレディ・ハイモアは素晴らしかった。けなげな男の子をやらせて、これほどはまる子もなかなかいない。演奏シーンはいずれも良かった。特にギターの演奏シーンがすごく好き。
 ただ、この映画の軸は、主人公エヴァンの音楽の才能と情熱と、両親との絆の二つなのだけど、後者にまったく説得力がなかった。まず母親ライラと父親ルイスの若き日の一度きりの関係からエヴァンが生まれるのだけど、これがもう「一夜の恋」と呼ぶのもばかばかしい衝動的な交わり。それでも母親は、自分の父にとやかく言われながらも必死で守って産んだ子だから、愛し、死んだと思っていたのが生きていて必死で探しまわるのもわかるけれど、父親に至ってはエヴァンの存在すら知らずに10年過ごしている。時がたって再び昔の恋を思い出すのだけど、それだってライラにこがれているというよりはさえない現状から逃避したいようにしか見えない。
 そんなわけで、エヴァン少年の両親への思いは泣かせるけど、父親があまりに情けない。
 音楽を中心としたストーリーとしては、面白かった。エヴァンの天才的な音楽の才能はあそこまで行くとファンタジーだけど、ストリートチルドレンたちのままごとのような暮らしとあいまって、厭味を感じさせない。だからむしろそれだけで押し通した方が良かったのじゃないかと思う。エヴァンは音楽を通じて様々な人々と出会い、繋がりを手に入れていく。それがあればたとえ両親がいなくとも、充分に幸福な人生を送れると思うのだ。
 ミュージカル『アニー』がある。いつか両親に出会うことを夢見て辛い毎日に耐えている孤児アニーのもとを訪れるハッピーエンドは、両親との再会ではなく、“孤児アニー”を心から愛してくれる新しい家族の存在だ。

 あの親子3人が再会して、あまりあの後上手くいく気はしない。だけどひょっとしたら、両親の存在に気づかないまま野外コンサートで奇跡のシンフォニーを奏でたエヴァンはすでに両親の存在を超えているのかもしれないけれど。

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